これはおいしいお寿司

No.61

魅入られる

-2025.3.16で出していた無配

 セベクはオンボロ寮でいつものように読書をしていたが、集中できないでいた。
「僕は貴様に魅入られていると思うか?」
 どうにもページが進まず、肖像画を見上げる。
「我輩に、ですか?」
 読書をするセベクをずっと見つめていたスカリーは、突然声をかけられて目を丸くした。
「ここに来る道中で、リリア様にそう言われたのだ。絵と言えば貴様しかないだろう」
 あくまでも自分の意思で理性的にオンボロ寮に通っているつもりのセベクは、リリアの言葉が腑に落ちないでいた。
「我輩は常に貴方様のことを想っておりますから、そう言われても仕方がありませんね」
 スカリーは目を細めて微笑む。
 彼の瞳は宝石のように輝き、警告灯のように危機感を覚える。
「……確かに……仕方がないな」
 セベクはその蠱惑的な赤い瞳から目を離せずに、静かに呟いた。
 開け放たれた窓から春の香りが訪れ、ページがパラパラとめくれる。
 油絵の具の匂いが少しずつ薄れていった。





頒布2025.3.16

スカセベ,SS

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