これはおいしいお寿司

No.7

木陰の下

–レオナの夢

 真っ暗でじめじめとした、それでいて砂の手触りで乾燥している、そんなところにいた。
 ずっとそこにいたような気もするし、つい先程迷い込んだばかりのような気もする。
 腹は減らず、喉も渇かず、退屈さも感じなかった。
 ただそこにいた。
 “ここ”に気づいてからどれだけ経っていただろうか、5分かあるいは1日か。
 ぼんやりしていると突然目に痛みが走った。
 視界が真っ白になり、頭がクラクラする。
 怪我か病気か、誰かにやられたのか。
 瞼をグッと閉じ心を落ち着ける。
 しばらくして、なんてことはない、眩い光が目を刺したのだと気がついた。
 それは幼い頃、太陽を直視したときの痛みに似ていた。

 植物園は冬でも暖かい。心地の良い木漏れ日の中で眠るのが好ましい。
 本日も授業の始まりの音を彼方に、木陰の下でゆるりと目を閉じる。
 いつしか日が昇り、日光が顔を照らしたのだろうか。いやに眩しい夢を見て目が覚めた。
 顔がじりじりと焼ける。
 右に左に上に下に。
 木陰に入り直して体勢を変えてみるものの、動けば動くほど眠気は遠ざかり、二度寝は諦めざるを得なかった。だが、意地で起き上がるつもりはなかった。
 固く目を閉じ、冴えた脳みそを宙へと踊らせる。
 今日の昼ご飯、サボれる回数、課外授業に必要な材料、捨てたらまずい授業、読みかけの本、放課後の部活、甥からの手紙、さっきまで見ていた夢。
 あの夢はなんだったろうか。気分が落ち込むくらいに真っ暗で、最後にとてつもなく眩しくて。
 いや、それだけか。
 特に内容のない夢だった。気分の良いものではなかったが、甥が何十人にも分裂して名前を呼んでくる夢よりずっといい。
 だが、夢の眩しさに既視感を覚えていた。それがなんなのかピンとくるものが思いつかず、苛立つ。最近感じた眩しさによく似ているような気がする。
 土と麦藁の髪と空色の瞳を持つ後輩。色彩と真逆でお天道様に到底見せられないようなことばかりしている。
 月光の髪と蜂蜜の瞳を持つ後輩。色彩と真逆で暑苦しくて堪らない。特にあのギラついた瞳で見つめられた日には。
 ああ嫌だ。
 汚れを一切知らない瞳は、美しいものも醜いものも燃やし尽くす太陽で。太陽のように誰も彼も平等に照らすのか。

 思考の中でいつの間にか微睡んでいたのだろう、自分を呼ぶ声が遠くに聞こえた。
 呆れと少しの怒りと、何かを隠した甘さを滲ませた声が近づいてくる。
 あの太陽は今、たった1人だけを照らさんと探している。
 気分が良い。
 いつの間にか口元が緩んでいることに気がついた。

 夢を終わらせた強烈な日差しが近づいてくる。
 それは幼い日に手を伸ばしても届かない光だった。

 

 

レオジャク_2week
Twitter投稿2023.2.27

レオジャク,SS

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