これはおいしいお寿司
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No.37
アドベントカレンダー2024
-11日目
昼休み、ジャックは図書館を訪れていた。
低難易度で華やかな魔法はないかと、「魔法士見習い」や「初めての魔法」などのタイトルがついた本を片っ端から開いていく。
レオナのような花火を出せたらいいが、室内で火を使った花火を出すには危険で、光るだけで燃えない疑似花火はより高度な技術が必要で、到底真似などできそうになかった。
花を出してみることも考えたが、自分のキャラではないような気がして、早々に却下した。
そもそも引き出しのような小さい箇所に仕掛ける繊細な魔法を、ジャックは苦手としていた。
本を棚に戻し、図書館を後にする。
どうしたものかと悩み、困ったときに彼あり、というわけで購買部に向かった。
購買は相変わらずクリスマス一色に飾られ、目がチカチカする。
「ハーイ、小鬼ちゃん、何かお探しで?」
サムの陽気なかけ声が耳にすっ飛んできた。
いつものこととはいえ、びっくりする。
瞬時に耳を伏せ、少し尻尾を膨らませて店内を回る。
クリスマスプレゼント用として既にラッピングされた物を入れるのは、手を抜いたような気がして躊躇われた。
クリスマスコーナーから離れ、常設の日用品やちょっとした食べ物の棚に移動する。
いつも通りの品揃えに、目が落ち着く。
ラッピングされた物が嫌とはいえ、駄菓子や栄養機能食品は味気ないような気がする。いつも目にする物ばかりで、特別感もない。
ため息をついて隣の棚に目をやると、世界の食べ物コーナーなるものができていた。
輝石の国の主だった地方の郷土料理や、薔薇の王国産の紅茶などが置いてある。
いつの間にこんな棚が……とじっくり見る。
輝石の国を代表する地域は、ジャックの故郷ではなかった。名前は聞いたことがある程度の、食べたことのないお菓子などが置かれていた。
どうせならジャックが小さな頃から食べてきた物があればよかったのだが。
「随分と悩んでいるようだね。プレゼントかい? なんでもご用意してみせよう」
後ろから唐突に声をかけられ、慌てて振り返る。
後ろで、サムがにこやかに片手を上げていた。
「いや、その」
驚いて飛び跳ねた心臓が落ち着くのを待っている間に、サムにかけたい言葉が見つかった。
「それで、お前は何を用意してきたんだ?」
夕飯を済ませたあと、満腹でいつも以上に動きがのんびりしているレオナと、アドベントカレンダーを挟んで座る。場所はいつも通り、レオナの部屋のベッドの上だ。
「俺のとっておきです」
ジャックは自信満々に言い、引き出しを早く開けるよう促した。
にやにやと笑いながらレオナが引き出しの中を覗く。
「これは……?」
「地元のお菓子っす。小さい頃からおやつに食べてました」
レオナの手には小さなレーズンパンが載っていた。
「こっちでもレーズンパンは食えるんすけど、やっぱり味が違うというか」
購買でダメ元でサムに聞くと、当然といった風に奥から出してきた。引き出しに入る小さなサイズはあるかと聞くと、それももちろん出してきた。
「小さいんで一口で食べられますけど、地元で食べてたもう少し大きいパンは、バターつけて食うのがうまいんです」
ジャックは話しながら、レオナがゆっくりと食べる様子を見守った。
「なんだ、スパイスが入ってるのか?」
「はい。それが一番の特徴だと思います」
ポケットに入れていた、余ったパンを取り出してジャックも食べる。
独特の清涼感が鼻を突き抜ける。
「そのスパイスは好き嫌い分かれるんで、これにするか迷ったんですけど。でも俺の国のこと知ってもらいたいと思って」
「……悪くねえな」
ごまかしている表情には見えない。
ジャックは大きくガッツポーズをした。
「前までカレンダーに入ってた菓子より、いいモン使ってるしな。変わった香りがするが、嫌いじゃねえ」
「よかったです。もしこの一口サイズのパンじゃなくて、大きな普通のサイズのパンを食べる機会があったら、焼きたてにバターつけてみてください」
「機会、ねえ」
気に入ったのか、ジャックのポケットに入っているいくつかのパンを強奪し、ぱくぱくとレオナは食べる。夕飯後だというのに、よく入るものだ。
「あ、いや。こっちに来ることなんてそうそうないと思うんすけど」
「じゃあお前が案内しろ」
「え?」
本気か冗談かわからない笑みをレオナは浮かべていた。
「パン食いに行くから、お前の国を案内してくれ」
「パンだけのために?」
「ほかに理由が必要ならいくらでも作ってやるが?」
これ以上聞き返すと、国の権力を使ってくるかもしれない、とジャックはすぐ降参した。
「わかりました。といっても今年のウィンターホリデーは無理っすからね。来年とか再来年とかの長期休暇のときとか。予定が合うときに」
どうせレオナは忘れてしまうだろうが。
本物の約束にならないと思いながらも、ジャックはレオナを案内するならどこに連れて行こうかと想像する。観光名所は当然だが、地元民しか知らない秘密のスキー場にも案内したい。あと季節によってはおいしい果物の生る果樹園にも。
期待すればするほど、あとになって寂しくなってしまう。
わかっていても想像は膨らみ続けた。
無理矢理思考を止めようと、口を開く。
「じゃあ、明日はレオナ先輩の番っすね」
「おう。楽しみにしておけよ」
「はい」
また空っぽになったアドベントカレンダーをレオナに預ける。
明後日の分を今のうちに考えておかないと。
時間はどれだけあっても足りないが、常に全力のとっておきをレオナに見せたい。
いくつか候補を挙げるべく、明日また図書館と購買に通おうと決めた。
Twitter投稿2024.12.17
レオジャク
,
アドベントカレンダー2024
,
SS
2026.1.15
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低難易度で華やかな魔法はないかと、「魔法士見習い」や「初めての魔法」などのタイトルがついた本を片っ端から開いていく。
レオナのような花火を出せたらいいが、室内で火を使った花火を出すには危険で、光るだけで燃えない疑似花火はより高度な技術が必要で、到底真似などできそうになかった。
花を出してみることも考えたが、自分のキャラではないような気がして、早々に却下した。
そもそも引き出しのような小さい箇所に仕掛ける繊細な魔法を、ジャックは苦手としていた。
本を棚に戻し、図書館を後にする。
どうしたものかと悩み、困ったときに彼あり、というわけで購買部に向かった。
購買は相変わらずクリスマス一色に飾られ、目がチカチカする。
「ハーイ、小鬼ちゃん、何かお探しで?」
サムの陽気なかけ声が耳にすっ飛んできた。
いつものこととはいえ、びっくりする。
瞬時に耳を伏せ、少し尻尾を膨らませて店内を回る。
クリスマスプレゼント用として既にラッピングされた物を入れるのは、手を抜いたような気がして躊躇われた。
クリスマスコーナーから離れ、常設の日用品やちょっとした食べ物の棚に移動する。
いつも通りの品揃えに、目が落ち着く。
ラッピングされた物が嫌とはいえ、駄菓子や栄養機能食品は味気ないような気がする。いつも目にする物ばかりで、特別感もない。
ため息をついて隣の棚に目をやると、世界の食べ物コーナーなるものができていた。
輝石の国の主だった地方の郷土料理や、薔薇の王国産の紅茶などが置いてある。
いつの間にこんな棚が……とじっくり見る。
輝石の国を代表する地域は、ジャックの故郷ではなかった。名前は聞いたことがある程度の、食べたことのないお菓子などが置かれていた。
どうせならジャックが小さな頃から食べてきた物があればよかったのだが。
「随分と悩んでいるようだね。プレゼントかい? なんでもご用意してみせよう」
後ろから唐突に声をかけられ、慌てて振り返る。
後ろで、サムがにこやかに片手を上げていた。
「いや、その」
驚いて飛び跳ねた心臓が落ち着くのを待っている間に、サムにかけたい言葉が見つかった。
「それで、お前は何を用意してきたんだ?」
夕飯を済ませたあと、満腹でいつも以上に動きがのんびりしているレオナと、アドベントカレンダーを挟んで座る。場所はいつも通り、レオナの部屋のベッドの上だ。
「俺のとっておきです」
ジャックは自信満々に言い、引き出しを早く開けるよう促した。
にやにやと笑いながらレオナが引き出しの中を覗く。
「これは……?」
「地元のお菓子っす。小さい頃からおやつに食べてました」
レオナの手には小さなレーズンパンが載っていた。
「こっちでもレーズンパンは食えるんすけど、やっぱり味が違うというか」
購買でダメ元でサムに聞くと、当然といった風に奥から出してきた。引き出しに入る小さなサイズはあるかと聞くと、それももちろん出してきた。
「小さいんで一口で食べられますけど、地元で食べてたもう少し大きいパンは、バターつけて食うのがうまいんです」
ジャックは話しながら、レオナがゆっくりと食べる様子を見守った。
「なんだ、スパイスが入ってるのか?」
「はい。それが一番の特徴だと思います」
ポケットに入れていた、余ったパンを取り出してジャックも食べる。
独特の清涼感が鼻を突き抜ける。
「そのスパイスは好き嫌い分かれるんで、これにするか迷ったんですけど。でも俺の国のこと知ってもらいたいと思って」
「……悪くねえな」
ごまかしている表情には見えない。
ジャックは大きくガッツポーズをした。
「前までカレンダーに入ってた菓子より、いいモン使ってるしな。変わった香りがするが、嫌いじゃねえ」
「よかったです。もしこの一口サイズのパンじゃなくて、大きな普通のサイズのパンを食べる機会があったら、焼きたてにバターつけてみてください」
「機会、ねえ」
気に入ったのか、ジャックのポケットに入っているいくつかのパンを強奪し、ぱくぱくとレオナは食べる。夕飯後だというのに、よく入るものだ。
「あ、いや。こっちに来ることなんてそうそうないと思うんすけど」
「じゃあお前が案内しろ」
「え?」
本気か冗談かわからない笑みをレオナは浮かべていた。
「パン食いに行くから、お前の国を案内してくれ」
「パンだけのために?」
「ほかに理由が必要ならいくらでも作ってやるが?」
これ以上聞き返すと、国の権力を使ってくるかもしれない、とジャックはすぐ降参した。
「わかりました。といっても今年のウィンターホリデーは無理っすからね。来年とか再来年とかの長期休暇のときとか。予定が合うときに」
どうせレオナは忘れてしまうだろうが。
本物の約束にならないと思いながらも、ジャックはレオナを案内するならどこに連れて行こうかと想像する。観光名所は当然だが、地元民しか知らない秘密のスキー場にも案内したい。あと季節によってはおいしい果物の生る果樹園にも。
期待すればするほど、あとになって寂しくなってしまう。
わかっていても想像は膨らみ続けた。
無理矢理思考を止めようと、口を開く。
「じゃあ、明日はレオナ先輩の番っすね」
「おう。楽しみにしておけよ」
「はい」
また空っぽになったアドベントカレンダーをレオナに預ける。
明後日の分を今のうちに考えておかないと。
時間はどれだけあっても足りないが、常に全力のとっておきをレオナに見せたい。
いくつか候補を挙げるべく、明日また図書館と購買に通おうと決めた。
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