これはおいしいお寿司
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No.39
アドベントカレンダー2024
-13日目
「今から準備するんで、目を瞑って待っててください」
放課後、レオナの部屋に入るや否や、ジャックはアドベントカレンダーを胸に抱えながらそう言った。
レオナはベッドでうつらうつらとしていたが、ジャックが入ってきた瞬間に跳ね起き、ジャックの言葉に目を丸くした。
「えーと、つまり?」
「いいから目を瞑っててください」
まだ言葉を飲み込めていないレオナの顔に枕を押しつけ、視界を無理矢理封じてからジャックはアドベントカレンダーの引き出しを開けた。
引き出しの中はまだ空だった。
そこに準備してきた物をポケットから取り出し、小声で呪文を唱える。
小さくなったそれを引き出しにしまい、レオナに声をかけた。
「先輩、準備できました」
「もういいのか?」
言いながらレオナは、押しつけられるがままになっていた枕をどかす。
「はい。俺がいいって言ったら、開けてみてください」
ジャックはスマホの時計をちらちら見ながら、アドベントカレンダーをベッドに置いた。
「おう」
「そろそろ……よし、開けてください」
待ち構えていたレオナが引き出しを開け、中の物を手のひらに載せる。
それは植物の種だった。
手のひらに転がって数秒後、種は動き出して緑色の芽を覗かせた。
みるみるうちに芽は伸び、だんだん丸みを帯びてきたところで細い棘がいくつも生えてくる。
やがて、それはサボテンの形になって動きを止めた。
「なるほど。ハーツラビュルに行ってたのはこれが理由か?」
ジャックが手渡した植木鉢に小さなサボテンを植えて、レオナは言った。
「見てたんすか? よくわかりましたね」
「お前がハーツラビュルに行く理由なんざ、魔法を習いにいくか、やんちゃなお友だちにからかわれに行くときぐらいだろ」
「あいつらは友だちじゃねえっすけど。そうです、リドル先輩に教えてもらいました。棘だけを伸ばすより簡単だろうって」
「それと時限魔法も掛け合わせたな」
大きな植木鉢に植えられたサボテンをじっくりと見ながら、レオナは話し続ける。
ジャックは目をぱちくりさせた。
「さすが先輩。そんなことも見てわかるんすね」
「俺が仕掛けたいくつかの動作がトリガーとなる魔法は、お前にはまだ複雑すぎるからな。それにお前の合図で開ける必要があったってのと。一番は詠唱が普通に聞こえてたことだ」
「あっ」
「目を塞いでも、耳にはしっかり聞こえてたぞ」
短時間の時限魔法を使うのがやっとなため、レオナの部屋で魔法をかける必要があったのだが、隠しきることができなかったようだ。
「詰めが甘かったっすね……」
「だが、時限魔法は二年で教わる魔法だ。よく練習したな」
サボテン片手に、ゆっくりとレオナは手を伸ばしてジャックの頭を撫でた。
ジャックは突然のことにまばたきを数度繰り返してから、耳を伏せた。
顔が急激に熱くなる。
「別に……勉強のきっかけになると思っただけで、先輩を驚かせるためとか、そんなんじゃないっす」
もごもごと言い訳を口にしたが、レオナはそれを聞いてにんまりと笑った。
「俺のために一日二日でモノにしたってことか。いい後輩を持ったもんだ」
「だから、先輩のせいなんかじゃ……ちょっとは褒めてもらえたらとは思いましたけど」
まさか、頭を撫でられるとは。
熱は上がる一方で、どうしていいかわからず、だんだん小声になっていく。
レオナの手は止まりそうにない。
「その……先輩、もうやめてください。ガキじゃねえ」
躊躇ってから、ジャックは髪を掻き回し始めているレオナの手を握ってどかした。
「減るもんじゃねえだろ」
髪から離れ、手が寂しくなったのか、レオナはジャックの手のひらを撫でたり、指を爪の先で引っ掻いたり遊び始めた。
「先輩! 俺で遊ばないでください」
手のくすぐったさに、ぞわりと体中の毛が逆立ち、レオナの手を振りほどいた。
衝動のまま立ち上がり、レオナを睨む。
「さ、サボテンは本物の種なんで、ちゃんと水やってください! 一年分だけ成長させたので、まだ大きくなると思いますが、大きめの鉢にしたので問題ないはずです!」
ぎゅっと自身の両手を握り、落ち着けと言い聞かせるが、心臓がうるさい。
「じゃ、じゃあ、俺はこれで」
レオナの返事も聞かずにジャックは部屋を飛び出した。
ただ褒められただけなのに、素直に嬉しいと言えばよかっただけなのに、どうして逃げてしまったのか。
自室に急ぎながら、冷たい風で頬を冷やしながら、ジャックはわからずにいた。
今はただ、原因であるレオナの前にいられなかった。
本当はサボテンを選んだ理由をきちんと説明したかったのに、口は思うように動かなかった。
ただただ、頭を空っぽにしようと走る。
明日、どんな顔をしてレオナの部屋を訪れたらいいのか悩むのは、ジャックが冷静さを取り戻してからのことだった。
Twitter投稿2024.12.21
レオジャク
,
アドベントカレンダー2024
,
SS
2026.1.15
No.39
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「今から準備するんで、目を瞑って待っててください」
放課後、レオナの部屋に入るや否や、ジャックはアドベントカレンダーを胸に抱えながらそう言った。
レオナはベッドでうつらうつらとしていたが、ジャックが入ってきた瞬間に跳ね起き、ジャックの言葉に目を丸くした。
「えーと、つまり?」
「いいから目を瞑っててください」
まだ言葉を飲み込めていないレオナの顔に枕を押しつけ、視界を無理矢理封じてからジャックはアドベントカレンダーの引き出しを開けた。
引き出しの中はまだ空だった。
そこに準備してきた物をポケットから取り出し、小声で呪文を唱える。
小さくなったそれを引き出しにしまい、レオナに声をかけた。
「先輩、準備できました」
「もういいのか?」
言いながらレオナは、押しつけられるがままになっていた枕をどかす。
「はい。俺がいいって言ったら、開けてみてください」
ジャックはスマホの時計をちらちら見ながら、アドベントカレンダーをベッドに置いた。
「おう」
「そろそろ……よし、開けてください」
待ち構えていたレオナが引き出しを開け、中の物を手のひらに載せる。
それは植物の種だった。
手のひらに転がって数秒後、種は動き出して緑色の芽を覗かせた。
みるみるうちに芽は伸び、だんだん丸みを帯びてきたところで細い棘がいくつも生えてくる。
やがて、それはサボテンの形になって動きを止めた。
「なるほど。ハーツラビュルに行ってたのはこれが理由か?」
ジャックが手渡した植木鉢に小さなサボテンを植えて、レオナは言った。
「見てたんすか? よくわかりましたね」
「お前がハーツラビュルに行く理由なんざ、魔法を習いにいくか、やんちゃなお友だちにからかわれに行くときぐらいだろ」
「あいつらは友だちじゃねえっすけど。そうです、リドル先輩に教えてもらいました。棘だけを伸ばすより簡単だろうって」
「それと時限魔法も掛け合わせたな」
大きな植木鉢に植えられたサボテンをじっくりと見ながら、レオナは話し続ける。
ジャックは目をぱちくりさせた。
「さすが先輩。そんなことも見てわかるんすね」
「俺が仕掛けたいくつかの動作がトリガーとなる魔法は、お前にはまだ複雑すぎるからな。それにお前の合図で開ける必要があったってのと。一番は詠唱が普通に聞こえてたことだ」
「あっ」
「目を塞いでも、耳にはしっかり聞こえてたぞ」
短時間の時限魔法を使うのがやっとなため、レオナの部屋で魔法をかける必要があったのだが、隠しきることができなかったようだ。
「詰めが甘かったっすね……」
「だが、時限魔法は二年で教わる魔法だ。よく練習したな」
サボテン片手に、ゆっくりとレオナは手を伸ばしてジャックの頭を撫でた。
ジャックは突然のことにまばたきを数度繰り返してから、耳を伏せた。
顔が急激に熱くなる。
「別に……勉強のきっかけになると思っただけで、先輩を驚かせるためとか、そんなんじゃないっす」
もごもごと言い訳を口にしたが、レオナはそれを聞いてにんまりと笑った。
「俺のために一日二日でモノにしたってことか。いい後輩を持ったもんだ」
「だから、先輩のせいなんかじゃ……ちょっとは褒めてもらえたらとは思いましたけど」
まさか、頭を撫でられるとは。
熱は上がる一方で、どうしていいかわからず、だんだん小声になっていく。
レオナの手は止まりそうにない。
「その……先輩、もうやめてください。ガキじゃねえ」
躊躇ってから、ジャックは髪を掻き回し始めているレオナの手を握ってどかした。
「減るもんじゃねえだろ」
髪から離れ、手が寂しくなったのか、レオナはジャックの手のひらを撫でたり、指を爪の先で引っ掻いたり遊び始めた。
「先輩! 俺で遊ばないでください」
手のくすぐったさに、ぞわりと体中の毛が逆立ち、レオナの手を振りほどいた。
衝動のまま立ち上がり、レオナを睨む。
「さ、サボテンは本物の種なんで、ちゃんと水やってください! 一年分だけ成長させたので、まだ大きくなると思いますが、大きめの鉢にしたので問題ないはずです!」
ぎゅっと自身の両手を握り、落ち着けと言い聞かせるが、心臓がうるさい。
「じゃ、じゃあ、俺はこれで」
レオナの返事も聞かずにジャックは部屋を飛び出した。
ただ褒められただけなのに、素直に嬉しいと言えばよかっただけなのに、どうして逃げてしまったのか。
自室に急ぎながら、冷たい風で頬を冷やしながら、ジャックはわからずにいた。
今はただ、原因であるレオナの前にいられなかった。
本当はサボテンを選んだ理由をきちんと説明したかったのに、口は思うように動かなかった。
ただただ、頭を空っぽにしようと走る。
明日、どんな顔をしてレオナの部屋を訪れたらいいのか悩むのは、ジャックが冷静さを取り戻してからのことだった。
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