これはおいしいお寿司
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No.45
アドベントカレンダー2024
-19日目
思えば、甘いものがずっと続いていた気がする。
クリスマスといえばスイーツというイメージがあったからだろうか。
厳密に言えば食べ物以外を入れていたこともあったが、少し気分を変えて違うものを選んでみようか。
ジャックは食堂のテイクアウトコーナーのちょっとした間食用のつまみを見ていた。
小袋に入った野菜の揚げ物や、クッキーなど、シェフが気まぐれに作ったおやつが並んでいる。
野菜はどう加工しても食べないだろうし、クッキーはしばらく見たくない。
横から順に見ていき、とある商品が目に入った。
ビーフジャーキーだ。
肉は二人とも好きだし、それにまさかアドベントカレンダーから出てくるとは想像もしていないだろう。いい具合にレオナを驚かせることができそうだ。
一袋手に取り、少し考えてからもう一袋追加した。
「なんかいい匂いがするな」
アドベントカレンダーをレオナの部屋に持っていった瞬間、真っ先に言われた。
やはり肉の匂いには敏感らしい。
ジャックは苦笑しながらアドベントカレンダーを手渡した。
「開けてみてください」
レオナはいつもより機嫌がいいのを隠さず、そそくさと開けた。
「食堂のじゃねえか。あそこの肉はうまいんだ」
今までに見たことのない素早さでビーフジャーキーを口に入れ、おいしそうに噛みしめた。
「食べたことあるんですか?」
「ああ。晩酌の肴にぴったりでな」
「……学園の敷地内での飲酒って成人でも禁止されてた気がするんですけど」
じっとりとレオナを見るが、レオナはしれっとした顔で顔色一つ変えない。
「教師共は休みに教員寮で飲んでるぞ」
「教師と生徒じゃ違うような」
「肩書きで扱いを変えるべきじゃねえだろ。教師が敷地内で飲んでいいなら、成人済みの生徒も飲んでいいに決まってる」
そういうものか? レオナが堂々と言うとそれっぽく聞こえて納得してしまうから困る。
「夕飯には早いが……」
レオナはベッドの下から瓶とグラスを出してきた。
「え、今ここで飲むんすか」
「とびっきりのつまみがあるんだ、飲むしかねえだろ」
「ただのおやつとして選んだんですけど、俺」
鼻歌を歌いながらレオナは琥珀色の液体をグラスに注ぐ。
「ああ、お前はこっちな」
そう言って、ジャックに未開封のスポーツドリンクのペットボトルを投げてよこした。
「あ、ありがとうございます……って、ここで本当に飲むんですか?」
「お前も飲みたいのか? ケーキに入った酒だけで泥酔する奴に飲ませるわけねえだろ」
レオナは守るように瓶を遠くに置いた。
「そもそも未成年だから飲みませんけど……」
何をどう言おうと、レオナがジャックの小言を聞いたことなどないのだ。
ジャックはため息をついてスポーツドリンクの蓋を開けた。
「先輩、皿出してください」
アドベントカレンダーに入る程度のビーフジャーキーじゃ足りないだろうと、追加で買ってきた袋を開けた。
「気が利くじゃねえか」
「先輩のためじゃねえっす。一、二枚じゃ絶対物足りないと思ったし、俺も食べたかっただけなんで」
「そうかよ」
レオナは酒を一口飲み、ビーフジャーキーを囓って笑った。
ジャックはスポーツドリンクを飲んで、同じようにビーフジャーキーを囓った。
スポーツドリンクの甘みとビーフジャーキーの塩辛さは微妙に合わない。
そんなに酒と合うものなのか。
無意識にレオナのグラスを凝視していたらしく、レオナは「飲むなよ」と言った。
「大人になるまで飲みませんが」
「お前は弱いんだから、大人になっても飲むなよ」
「一口くらい」
「……飲むなら俺の前だけにしておけ」
酔って記憶をなくしたからだろうが、そんなに口うるさく言う必要はあるのか。
「俺、本当に何もやらかさなかったんですか? 何もしてないって言うなら、どこで誰と飲もうと先輩が気にすることはないと思うんですけど」
「絶対駄目だ。お前は酔うと……いや、とにかく駄目だ」
なんと言われようと、成人さえしてしまえば飲む機会はいくらでもあるだろう。勝手に飲んでしまえばいい。
「成人したらいい酒を贈るから、俺の前以外で絶対に飲むなよ」
レオナは何も考えていない顔で、畳みかけるように何年も先の約束をしようとする。
将来をきちんと約束してくれないのに、こういうことを平気で言う。数年先も隣にいるって言うのなら、死ぬまで隣にいると言ってくれてもいいだろう。
レオナを恨めしげに見つめても、ほろ酔いのレオナは理解せずに首を傾げるのみだった。
「それが実現するかは、そのときの先輩次第っす」
約束をしない代わりに可能性を仄めかした。
ジャックも可能性を信じて進みたい気持ちは同じだった。レオナがそれに応えてくれたらと、ただそれだけを願っていた。
ビーフジャーキーをもう一枚食べた。
噛めば噛むほど肉のうまみが広がる。
レオナが誓ってさえくれれば、喜んでその手を取れるのに。
一年、また一年と歳を重ねるたびに考え方は変わっていくのだろうか。
数年後に酒を酌み交わす場面を想像してみようとしたが、そこにレオナがいる未来をどうしても見ることができなかった。
Twitter投稿2024.12.28
レオジャク
,
アドベントカレンダー2024
,
SS
2026.1.15
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思えば、甘いものがずっと続いていた気がする。
クリスマスといえばスイーツというイメージがあったからだろうか。
厳密に言えば食べ物以外を入れていたこともあったが、少し気分を変えて違うものを選んでみようか。
ジャックは食堂のテイクアウトコーナーのちょっとした間食用のつまみを見ていた。
小袋に入った野菜の揚げ物や、クッキーなど、シェフが気まぐれに作ったおやつが並んでいる。
野菜はどう加工しても食べないだろうし、クッキーはしばらく見たくない。
横から順に見ていき、とある商品が目に入った。
ビーフジャーキーだ。
肉は二人とも好きだし、それにまさかアドベントカレンダーから出てくるとは想像もしていないだろう。いい具合にレオナを驚かせることができそうだ。
一袋手に取り、少し考えてからもう一袋追加した。
「なんかいい匂いがするな」
アドベントカレンダーをレオナの部屋に持っていった瞬間、真っ先に言われた。
やはり肉の匂いには敏感らしい。
ジャックは苦笑しながらアドベントカレンダーを手渡した。
「開けてみてください」
レオナはいつもより機嫌がいいのを隠さず、そそくさと開けた。
「食堂のじゃねえか。あそこの肉はうまいんだ」
今までに見たことのない素早さでビーフジャーキーを口に入れ、おいしそうに噛みしめた。
「食べたことあるんですか?」
「ああ。晩酌の肴にぴったりでな」
「……学園の敷地内での飲酒って成人でも禁止されてた気がするんですけど」
じっとりとレオナを見るが、レオナはしれっとした顔で顔色一つ変えない。
「教師共は休みに教員寮で飲んでるぞ」
「教師と生徒じゃ違うような」
「肩書きで扱いを変えるべきじゃねえだろ。教師が敷地内で飲んでいいなら、成人済みの生徒も飲んでいいに決まってる」
そういうものか? レオナが堂々と言うとそれっぽく聞こえて納得してしまうから困る。
「夕飯には早いが……」
レオナはベッドの下から瓶とグラスを出してきた。
「え、今ここで飲むんすか」
「とびっきりのつまみがあるんだ、飲むしかねえだろ」
「ただのおやつとして選んだんですけど、俺」
鼻歌を歌いながらレオナは琥珀色の液体をグラスに注ぐ。
「ああ、お前はこっちな」
そう言って、ジャックに未開封のスポーツドリンクのペットボトルを投げてよこした。
「あ、ありがとうございます……って、ここで本当に飲むんですか?」
「お前も飲みたいのか? ケーキに入った酒だけで泥酔する奴に飲ませるわけねえだろ」
レオナは守るように瓶を遠くに置いた。
「そもそも未成年だから飲みませんけど……」
何をどう言おうと、レオナがジャックの小言を聞いたことなどないのだ。
ジャックはため息をついてスポーツドリンクの蓋を開けた。
「先輩、皿出してください」
アドベントカレンダーに入る程度のビーフジャーキーじゃ足りないだろうと、追加で買ってきた袋を開けた。
「気が利くじゃねえか」
「先輩のためじゃねえっす。一、二枚じゃ絶対物足りないと思ったし、俺も食べたかっただけなんで」
「そうかよ」
レオナは酒を一口飲み、ビーフジャーキーを囓って笑った。
ジャックはスポーツドリンクを飲んで、同じようにビーフジャーキーを囓った。
スポーツドリンクの甘みとビーフジャーキーの塩辛さは微妙に合わない。
そんなに酒と合うものなのか。
無意識にレオナのグラスを凝視していたらしく、レオナは「飲むなよ」と言った。
「大人になるまで飲みませんが」
「お前は弱いんだから、大人になっても飲むなよ」
「一口くらい」
「……飲むなら俺の前だけにしておけ」
酔って記憶をなくしたからだろうが、そんなに口うるさく言う必要はあるのか。
「俺、本当に何もやらかさなかったんですか? 何もしてないって言うなら、どこで誰と飲もうと先輩が気にすることはないと思うんですけど」
「絶対駄目だ。お前は酔うと……いや、とにかく駄目だ」
なんと言われようと、成人さえしてしまえば飲む機会はいくらでもあるだろう。勝手に飲んでしまえばいい。
「成人したらいい酒を贈るから、俺の前以外で絶対に飲むなよ」
レオナは何も考えていない顔で、畳みかけるように何年も先の約束をしようとする。
将来をきちんと約束してくれないのに、こういうことを平気で言う。数年先も隣にいるって言うのなら、死ぬまで隣にいると言ってくれてもいいだろう。
レオナを恨めしげに見つめても、ほろ酔いのレオナは理解せずに首を傾げるのみだった。
「それが実現するかは、そのときの先輩次第っす」
約束をしない代わりに可能性を仄めかした。
ジャックも可能性を信じて進みたい気持ちは同じだった。レオナがそれに応えてくれたらと、ただそれだけを願っていた。
ビーフジャーキーをもう一枚食べた。
噛めば噛むほど肉のうまみが広がる。
レオナが誓ってさえくれれば、喜んでその手を取れるのに。
一年、また一年と歳を重ねるたびに考え方は変わっていくのだろうか。
数年後に酒を酌み交わす場面を想像してみようとしたが、そこにレオナがいる未来をどうしても見ることができなかった。
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