これはおいしいお寿司

No.47

アドベントカレンダー2024

-21日目

 清々しい気持ちで目覚めた。
 しばらく離れていても以前と同じように馴染む部屋に、新鮮な甘酸っぱい香りが漂っている。
 起き上がり、少し残しておいたフルーツを齧る。
 昨日、確かにレオナと繋がっていたのだとじわじわ喜びが込み上げてきた。
 クリスマスまであと少し、最後までレオナと引き出しを開けられることを実感する。
 今日は何をレオナに贈ろうか。
 ジャックは鼻歌を歌いながら着替え、外に走りに出た。

 帰宅し、シャワーを浴び終える頃には皆朝ご飯の支度を始めていた。
「ジャック、このお皿テーブルに持っていって」
「うん。いや、ちょっと待ってて」
 スクランブルエッグの載った大皿をダイニングテーブルに置き、そのままバタバタと自室に戻る。
 レオナからもらった箱に、ランニング中に作った小さな雪だるまを入れて蓋をした。
 蓋を閉じた瞬間、箱が淡く光る。
 ドキドキしながら待っていると光が消え、箱を開けると中に入れていたはずの雪だるまは跡形もなく空っぽになっていた。きっとレオナのところへ転送されたのだろう。
 午後にならないと気づかないだろうが、起きるまで待てずにメッセージを送る。
「ジャック、ご飯だって」
「今行く」
 母親に大声で呼ばれ、スマホをポケットに入れて自室から出た。

 食事を終えるとちょうどレオナから着信が入った。つい家族からスマホを隠すようにダイニングを飛び出す。
「おはようございます」
『……はよ。もうそんな時間じゃねえか』
「先輩には珍しく早起きっすね」
『誰かさんの通知で起こされたんだよ』
「いつもラギー先輩が仕掛けてるアラームで起きないのに?」
『そういうこともある』
 レオナの静かな笑い声が耳の中で響く。なんともくすぐったい。
 スマホを耳に当てながら落ち着かずに廊下を彷徨う。
「それで、届きました?」
『ああ。耳の生えた雪だるまが二つな。お前のとこは雪降ってるのか』
「はい。例年、この時期はかなり積もるんです。降った次の日は雪掻きしないと走りに行けないくらい。今日はそんなに積もってなかったんで、走るだけでしたが」
『そうか』
「走ってたら、近所の早起きしてる子たちが雪で遊んでて誘われたので、雪合戦とか雪だるま作ったりしてきました」
『面倒見がいいんだな』
「生まれた頃から知ってる子ばかりなんで。兄弟みたいなもんっすよ」
『それで、この雪だるまも一緒に作ったと』
「……はい」
 夕焼けの草原は雪は降らないだろうと、子どもたちに混ざって遊びながら思いを馳せていた。
 同じ季節を過ごしているのに、きっと見ている景色はまったく違う。
 そう思うと、今視界に映る銀世界をレオナに伝えたくなった。
「こっちはすごく寒くて、みんな鼻を真っ赤にして、たくさん着込んで遊んでます。雪は膝くらいまで積もってました。トウヒの木にもたくさん積もっていて、学園に飾られていたクリスマスツリーが街の至る所に生えてるみたいです。あと、日が昇るのが遅くて沈むのが早いので、なんとなくずっと薄暗いです」
 今朝見たものをすべて伝えようと指を折り、つい早口になってしまう。
 レオナは時々相槌を打ち、ちゃんと聞いてくれているようだった。
「今朝はスクランブルエッグとトーストと、クラムチャウダーを食べました。母のクラムチャウダーはおいしくて、食堂で作ってもらえるスープとはなんか味が違うんですよね」
『それは気になるな』
「弟と妹が食事中に喧嘩し始めて、止めようとしたら足の小指を踏まれたり腕を叩かれたり、大変でした」
『怪我しなかったか?』
「全然。三ヶ月見なかっただけで身長は伸びたのに中身変わってなくて、安心しました」
『ガキの成長は早いからな』
「そうですね。チェカ王子には会いましたか?」
『会った、つか部屋に飛び込んできた。体重が前より重くなったな』
「ははっ」
 茶色の毛玉がレオナに突進する様を想像して笑った。
『――あ、噂をすれば影とやらだ。あいつが授業を抜け出したって連絡が来た。悪いな、一旦切る』
「っす。じゃあ、また」
『ああ』
 焦ったような声を残して通話が切れた。
 画面に表示された数字に目を丸くする。思っていた以上に長電話をしてしまった。
「お兄ちゃん、誰と電話してたの? 彼女?」
 ひょいと物陰から現れた妹がジャックに抱きついてくる。
「そんな言葉どこで覚えたんだか。学校の先輩だ」
 妹を片腕で抱き上げ、スマホをポケットにしまった。
「そうなの。かっこいい人?」
「うーん、そうだな……」
 今頃甥っ子に追いかけ回されているであろうレオナを思い浮かべる。
「すっげえかっこいい人だ」

 

 

Twitter投稿2025.1.5

レオジャク,アドベントカレンダー2024,SS

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