これはおいしいお寿司
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No.49
アドベントカレンダー2024
-23日目
目覚まし時計の音で目が覚めた。
昨晩はレオナと通話をしながら眠ってしまったらしい。ジャックの右手には、通話時間が表示されたスマホがしっかりと握られていた。
寮長相手に寝落ちするという非礼に血の気が引き、慌ててメッセージを打った。朝の挨拶と昨晩の礼と謝罪を端的に打ち込み、数分待って返事がないことを確認してから大きく伸びをした。
何をやらかそうと、日課の走り込みは変わらないのだった。
今日は何をレオナに贈ろう。
二十三番目だから、ジャックからレオナに贈れるのはこれが最後だ。
まともな返事をしないまま、ずるずるとレオナの優しさに甘えてしまったが、アドベントカレンダーの終わりと共に答えを出さなくてはという焦りがあった。
リビングの窓から、日中にしてはやや薄暗い空を見上げて、考え込んでいた。
今日はやけに体の芯まで冷え込む。雪が降りそうだ。
「そんな顔して、悩んでることでもあるの?」
スケート靴を片手に母親が話しかけてきた。
「まあ……スケートでも行くの?」
「そう、明日父さんと久しぶりにスケート行くことになってね。シューズの歯を手入れしようと思って」
「夜までに帰る?」
「そりゃ帰るけど。なあに、留守番するの? スケート行かない?」
「いや……」
深刻な悩みを抱えている今、遊びに行く予定を入れる気にはなれなかった。
「久しぶりに行くなら、ゆっくりデートしてきたら? 二人とも俺が見るし」
「すっかり立派なお兄ちゃんになっちゃって」
「別に、面倒見るのは今さらだろ」
にっこりと微笑む母親に、憂鬱ながらも少し照れ臭くなって目を逸らした。
「そんな頼れるお兄ちゃんは何を悩んでいるのかな」
「別に……」
親に何かを相談する、ということが気恥ずかしくてごまかそうとして。一人でどうにもできないことは人に頼るべきだと思い出し、口を開いた。
「母さんと父さんって付き合ってそのまま結婚したんだよな」
「ふふ。そうだね」
母親はジャックと同じ色の瞳を細めた。
「ぶっちゃけると、父さんと結婚する前に何人か別の人と付き合ったよ。これは二人には内緒ね」
いたずらっ子のように、人差し指を唇に当ててシーと言った。
ジャックは母親の言葉に驚き、目を丸くした。
「え、どうして。生涯一人だけなんじゃ……」
「そうあれたらいいよねーくらいのやつだよ。ほかの種族に比べて、一つ一つの恋愛に真剣で一途な傾向がある程度のね。残念ながら母さんもジャックも狼の獣人属であって、狼じゃないから。理性と感情と、環境に振り回されて別れるしかないっていうのはよくある話だよ」
思いがけない話に、ジャックは黙って聞くことしかできなかった。
「人生をかけて誰かを真剣に好きになるのは、とてもいいことだよ。でも、子どものうちから結婚だとか真剣に考えすぎなくていいんだよ。ジャックなら遊びで人を振り回すことはないでしょ。好きって気持ちだけでぶつかっておいで」
「うん……って、別に俺は好きとか」
話すだけ話して、母親は手をひらひらとさせてリビングを出て行った。人の話を聞かないのは母親譲りかもしれない。
半ば呆れながら、ジャックはゆっくりと母親の話を反芻する。
レオナと感情の重みが違うことが気に掛かっていたがそれは別として、必ずしも将来を誓う必要はないと教えてもらえて、少し肩の荷が下りた気がした。この好きという感情がどれだけ重くても、未来のことはわからないのだと。
ジャックは自室の机の引き出しにしまってある、小さな宝箱を取り出した。
中には、普段から身につけているペンダントと同じ牙が入っている。
地元には、一頭の狼から取れる二本の牙を生まれた子に与え、一つは肌身離さず身につけ、もう一つは生涯を誓い合った者に贈る風習があった。ジャックも、対となる牙を〝いつか〟のために大切に保管していた。
これを渡すのは今ではないのかもしれない。
ずっと先の未来で違う人に渡したくなり、後悔する日が来るのかもしれない。
だが、今レオナに渡したかった。
レオナ以外の人は考えられなかった。
牙を手に、ジャックは何分も考えた。
そして。
息を吸い込んで、宝箱ごと箱に入れて蓋を閉めた。
箱は淡く光った。
後戻りはできない。
ジャックからの贈り物を待っていたかのように、スマホが着信を告げた。
「……っはい」
『おう、ジャックか。ちょうど今朝のメッセージを見たところだ。昨日はよく眠れたか?』
寝起きなどではなく、シャンと糊が利いたワイシャツのような声だ。
「はい……先輩のおかげで」
『それは何よりだ』
電話口の向こうで、何やら騒がしい音が聞こえる。
忙しくしている最中なのだろうか。
『さっき贈ってくれたものはなんだ? やけに厳つい箱に入っているが』
「あー……俺の地方の土産物っす。伝統工芸品、みたいな名物で」
『ああ、お前がいつも首からぶら下げてるのと似てるな』
風習のことは言えなかった。種族特有の重さをレオナに押しつけたくなかった。ジャックがどれだけ真剣に将来のことを考えても、レオナにはなんの関係もないことだ。
それぞれの隣に別の人がいる、来るかもしれない未来のことを想像すると胸をかきむしりたくなるような痛みに襲われる。そんな未来は来ないとレオナの口から保証してほしい気持ちはまだある。それでも、好きだと言ってくれた今の言葉を大切にすると決めた。それがどれだけ軽い気持ちだとしても。
「はい、俺のお気に入りっす。紐とか通せるようになってるんで、ペンダントじゃなくてもキーホルダーにもできます」
『そうか。どうするかな……』
悩んでいるようなうなり声が聞こえて、ジャックはそっと笑った。
『今何してるんだ?』
「部屋でのんびりしているところっす」
『なら、カメラつけられるか?』
「カメラ……っすか? 電話しながら?」
『ビデオ通話とかしたことねえの?』
「いや、あんまり」
そもそも人とこうして通話をすること自体が珍しい。普段メッセージで済ませがちなジャックは、スマホの画面を睨んでそれっぽいボタンを押した。
「……できてますか?」
『おう、お前の立派な耳で真っ暗だ』
「あっ」
慌ててスマホを耳から離し、顔の正面に持ってくる。
画面にはにやついたレオナの顔と、少し頬の赤い自分の顔がワイプで映されていた。
『この前まで寮で会ってたってのに、久しぶりに顔を見る気がするな』
「そう、っすね」
そう言われると確かに、最後に顔を合わせたのが何年も前のことのように感じられた。
たかが二、三日で何も変わるはずがないのに、レオナがずっと大人びて見える。
いつも結んでいる三つ編みと一緒に全体の髪をラフに括り、すっきりとした輪郭があらわになっている。スマホの荒い画質でも、レオナの凜々しい眉が綺麗な勾配を描いているのがわかる。
移動中なのか、車の座席のようなヘッドレストや車窓がレオナの奥に映り、時々画面が揺れる。
「先輩は今何してるんすか?」
『ん? ちょいとお出かけだ』
「そうっすか。そっちも冬は結構寒いんすね」
予想と反してレオナはタートルネックのセーターを着ていた。雪が降らないというだけで、夕焼けの草原は意外と寒いのかもしれない。もしかしたら、特に寒い地方に足を伸ばしているのかもしれない。王室の仕事というものはまったく想像がつかなかった。
『んー、まあな』
機密事項なのか、レオナは曖昧に笑った。
それ以上突っ込んでも答えてくれないだろうと、ジャックは深掘りしなかった。
「ところで先輩って明日はいつ頃空いてますか?」
『そうだな……昼過ぎからずっと空いている予定だ』
「あれ、夜は家族と過ごしたりしないんすか」
『んなわけねえだろ。クリスマスに一瞬顔を出して肉をつついときゃいい』
「せっかくのクリスマスなのに……」
言ってから、レオナの微妙な立場を思い出して口を閉じた。
『……聞くのをすっかり忘れてたが、お前の予定は?』
「俺はそうっすね……昼は多分両親がいないんで、弟たちと家の近くで遊んで、夜はみんなで夕飯を食べると思います」
そして、レオナの空いている時間にタイミングを見計らって電話で思いを伝えようと思っていたのだが。考え直してみれば、電話で伝えるというのは、いまいち真意が通じる気がしない。
告白は、その場のムードをしっかり作った上で直接目と目を合わせて行うのがベストというもの。
クリスマス・イヴ。
家族や恋人と過ごす大切な日だ。
ジャックの周りに限って言えば、雪景色で雰囲気は悪くない。街に出ればイルミネーションも輝いている。
そこにレオナがいないことを除いてすべてが完璧だ。
直接伝えることに重きを置いて、延期すべきだろうか。
だが、ホリデーが明けてしまえば新鮮味が薄れる気がする。何より、次の特別な日はバレンタインまで待たなければならない。
記念日を取るべきか、シチュエーションを取るべきか。
ジャックがうーんと悩んでいるのと同時に、画面に映るレオナも何やら思案に暮れる顔をしていた。
『なんだか明日のお前は忙しそうだな。イヴともなれば当然か』
「え? あ、いや、先輩の予定に合わせられるっすよ。昼飯や夕飯の時間以外は適当に過ごしてるんで」
ジャックは慌てて言った。
こちらに気を遣って、じゃあ明日のアドベントカレンダーはなしにして今日で終わりにする――などと言われたら、悲しいの一言では済まない。
「結構寒いんで、もしかしたら明日は大雪かもしれませんし。そしたら一日中家の中にいて暇なんで」
レオナからの最後のプレゼントがほしいし、できればまた電話をしたい――。
必死に時間があることをアピールし、レオナを画面越しに見つめた。
レオナはジャックの剣幕に目を開き、ややあって噴き出した。
『そんなに言うなら、昼からお前の時間をくれ』
よほど面白かったのか、目元を拭う動作をする。
「昼っすね。先輩が起きたらでいいっすよ」
レオナの言う昼なら、夕方になる覚悟もする所存だ。
常にスマホを取れるようにしないと。
『ちゃんと昼過ぎには起きてるさ。俺のとびっきりをくれてやる』
そう言うレオナの笑みがいつもに増して甘ったるい気がして、ジャックはスマホの画質が荒いことに心から感謝した。
Twitter投稿2025.1.10
レオジャク
,
アドベントカレンダー2024
,
SS
2026.1.15
No.49
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目覚まし時計の音で目が覚めた。
昨晩はレオナと通話をしながら眠ってしまったらしい。ジャックの右手には、通話時間が表示されたスマホがしっかりと握られていた。
寮長相手に寝落ちするという非礼に血の気が引き、慌ててメッセージを打った。朝の挨拶と昨晩の礼と謝罪を端的に打ち込み、数分待って返事がないことを確認してから大きく伸びをした。
何をやらかそうと、日課の走り込みは変わらないのだった。
今日は何をレオナに贈ろう。
二十三番目だから、ジャックからレオナに贈れるのはこれが最後だ。
まともな返事をしないまま、ずるずるとレオナの優しさに甘えてしまったが、アドベントカレンダーの終わりと共に答えを出さなくてはという焦りがあった。
リビングの窓から、日中にしてはやや薄暗い空を見上げて、考え込んでいた。
今日はやけに体の芯まで冷え込む。雪が降りそうだ。
「そんな顔して、悩んでることでもあるの?」
スケート靴を片手に母親が話しかけてきた。
「まあ……スケートでも行くの?」
「そう、明日父さんと久しぶりにスケート行くことになってね。シューズの歯を手入れしようと思って」
「夜までに帰る?」
「そりゃ帰るけど。なあに、留守番するの? スケート行かない?」
「いや……」
深刻な悩みを抱えている今、遊びに行く予定を入れる気にはなれなかった。
「久しぶりに行くなら、ゆっくりデートしてきたら? 二人とも俺が見るし」
「すっかり立派なお兄ちゃんになっちゃって」
「別に、面倒見るのは今さらだろ」
にっこりと微笑む母親に、憂鬱ながらも少し照れ臭くなって目を逸らした。
「そんな頼れるお兄ちゃんは何を悩んでいるのかな」
「別に……」
親に何かを相談する、ということが気恥ずかしくてごまかそうとして。一人でどうにもできないことは人に頼るべきだと思い出し、口を開いた。
「母さんと父さんって付き合ってそのまま結婚したんだよな」
「ふふ。そうだね」
母親はジャックと同じ色の瞳を細めた。
「ぶっちゃけると、父さんと結婚する前に何人か別の人と付き合ったよ。これは二人には内緒ね」
いたずらっ子のように、人差し指を唇に当ててシーと言った。
ジャックは母親の言葉に驚き、目を丸くした。
「え、どうして。生涯一人だけなんじゃ……」
「そうあれたらいいよねーくらいのやつだよ。ほかの種族に比べて、一つ一つの恋愛に真剣で一途な傾向がある程度のね。残念ながら母さんもジャックも狼の獣人属であって、狼じゃないから。理性と感情と、環境に振り回されて別れるしかないっていうのはよくある話だよ」
思いがけない話に、ジャックは黙って聞くことしかできなかった。
「人生をかけて誰かを真剣に好きになるのは、とてもいいことだよ。でも、子どものうちから結婚だとか真剣に考えすぎなくていいんだよ。ジャックなら遊びで人を振り回すことはないでしょ。好きって気持ちだけでぶつかっておいで」
「うん……って、別に俺は好きとか」
話すだけ話して、母親は手をひらひらとさせてリビングを出て行った。人の話を聞かないのは母親譲りかもしれない。
半ば呆れながら、ジャックはゆっくりと母親の話を反芻する。
レオナと感情の重みが違うことが気に掛かっていたがそれは別として、必ずしも将来を誓う必要はないと教えてもらえて、少し肩の荷が下りた気がした。この好きという感情がどれだけ重くても、未来のことはわからないのだと。
ジャックは自室の机の引き出しにしまってある、小さな宝箱を取り出した。
中には、普段から身につけているペンダントと同じ牙が入っている。
地元には、一頭の狼から取れる二本の牙を生まれた子に与え、一つは肌身離さず身につけ、もう一つは生涯を誓い合った者に贈る風習があった。ジャックも、対となる牙を〝いつか〟のために大切に保管していた。
これを渡すのは今ではないのかもしれない。
ずっと先の未来で違う人に渡したくなり、後悔する日が来るのかもしれない。
だが、今レオナに渡したかった。
レオナ以外の人は考えられなかった。
牙を手に、ジャックは何分も考えた。
そして。
息を吸い込んで、宝箱ごと箱に入れて蓋を閉めた。
箱は淡く光った。
後戻りはできない。
ジャックからの贈り物を待っていたかのように、スマホが着信を告げた。
「……っはい」
『おう、ジャックか。ちょうど今朝のメッセージを見たところだ。昨日はよく眠れたか?』
寝起きなどではなく、シャンと糊が利いたワイシャツのような声だ。
「はい……先輩のおかげで」
『それは何よりだ』
電話口の向こうで、何やら騒がしい音が聞こえる。
忙しくしている最中なのだろうか。
『さっき贈ってくれたものはなんだ? やけに厳つい箱に入っているが』
「あー……俺の地方の土産物っす。伝統工芸品、みたいな名物で」
『ああ、お前がいつも首からぶら下げてるのと似てるな』
風習のことは言えなかった。種族特有の重さをレオナに押しつけたくなかった。ジャックがどれだけ真剣に将来のことを考えても、レオナにはなんの関係もないことだ。
それぞれの隣に別の人がいる、来るかもしれない未来のことを想像すると胸をかきむしりたくなるような痛みに襲われる。そんな未来は来ないとレオナの口から保証してほしい気持ちはまだある。それでも、好きだと言ってくれた今の言葉を大切にすると決めた。それがどれだけ軽い気持ちだとしても。
「はい、俺のお気に入りっす。紐とか通せるようになってるんで、ペンダントじゃなくてもキーホルダーにもできます」
『そうか。どうするかな……』
悩んでいるようなうなり声が聞こえて、ジャックはそっと笑った。
『今何してるんだ?』
「部屋でのんびりしているところっす」
『なら、カメラつけられるか?』
「カメラ……っすか? 電話しながら?」
『ビデオ通話とかしたことねえの?』
「いや、あんまり」
そもそも人とこうして通話をすること自体が珍しい。普段メッセージで済ませがちなジャックは、スマホの画面を睨んでそれっぽいボタンを押した。
「……できてますか?」
『おう、お前の立派な耳で真っ暗だ』
「あっ」
慌ててスマホを耳から離し、顔の正面に持ってくる。
画面にはにやついたレオナの顔と、少し頬の赤い自分の顔がワイプで映されていた。
『この前まで寮で会ってたってのに、久しぶりに顔を見る気がするな』
「そう、っすね」
そう言われると確かに、最後に顔を合わせたのが何年も前のことのように感じられた。
たかが二、三日で何も変わるはずがないのに、レオナがずっと大人びて見える。
いつも結んでいる三つ編みと一緒に全体の髪をラフに括り、すっきりとした輪郭があらわになっている。スマホの荒い画質でも、レオナの凜々しい眉が綺麗な勾配を描いているのがわかる。
移動中なのか、車の座席のようなヘッドレストや車窓がレオナの奥に映り、時々画面が揺れる。
「先輩は今何してるんすか?」
『ん? ちょいとお出かけだ』
「そうっすか。そっちも冬は結構寒いんすね」
予想と反してレオナはタートルネックのセーターを着ていた。雪が降らないというだけで、夕焼けの草原は意外と寒いのかもしれない。もしかしたら、特に寒い地方に足を伸ばしているのかもしれない。王室の仕事というものはまったく想像がつかなかった。
『んー、まあな』
機密事項なのか、レオナは曖昧に笑った。
それ以上突っ込んでも答えてくれないだろうと、ジャックは深掘りしなかった。
「ところで先輩って明日はいつ頃空いてますか?」
『そうだな……昼過ぎからずっと空いている予定だ』
「あれ、夜は家族と過ごしたりしないんすか」
『んなわけねえだろ。クリスマスに一瞬顔を出して肉をつついときゃいい』
「せっかくのクリスマスなのに……」
言ってから、レオナの微妙な立場を思い出して口を閉じた。
『……聞くのをすっかり忘れてたが、お前の予定は?』
「俺はそうっすね……昼は多分両親がいないんで、弟たちと家の近くで遊んで、夜はみんなで夕飯を食べると思います」
そして、レオナの空いている時間にタイミングを見計らって電話で思いを伝えようと思っていたのだが。考え直してみれば、電話で伝えるというのは、いまいち真意が通じる気がしない。
告白は、その場のムードをしっかり作った上で直接目と目を合わせて行うのがベストというもの。
クリスマス・イヴ。
家族や恋人と過ごす大切な日だ。
ジャックの周りに限って言えば、雪景色で雰囲気は悪くない。街に出ればイルミネーションも輝いている。
そこにレオナがいないことを除いてすべてが完璧だ。
直接伝えることに重きを置いて、延期すべきだろうか。
だが、ホリデーが明けてしまえば新鮮味が薄れる気がする。何より、次の特別な日はバレンタインまで待たなければならない。
記念日を取るべきか、シチュエーションを取るべきか。
ジャックがうーんと悩んでいるのと同時に、画面に映るレオナも何やら思案に暮れる顔をしていた。
『なんだか明日のお前は忙しそうだな。イヴともなれば当然か』
「え? あ、いや、先輩の予定に合わせられるっすよ。昼飯や夕飯の時間以外は適当に過ごしてるんで」
ジャックは慌てて言った。
こちらに気を遣って、じゃあ明日のアドベントカレンダーはなしにして今日で終わりにする――などと言われたら、悲しいの一言では済まない。
「結構寒いんで、もしかしたら明日は大雪かもしれませんし。そしたら一日中家の中にいて暇なんで」
レオナからの最後のプレゼントがほしいし、できればまた電話をしたい――。
必死に時間があることをアピールし、レオナを画面越しに見つめた。
レオナはジャックの剣幕に目を開き、ややあって噴き出した。
『そんなに言うなら、昼からお前の時間をくれ』
よほど面白かったのか、目元を拭う動作をする。
「昼っすね。先輩が起きたらでいいっすよ」
レオナの言う昼なら、夕方になる覚悟もする所存だ。
常にスマホを取れるようにしないと。
『ちゃんと昼過ぎには起きてるさ。俺のとびっきりをくれてやる』
そう言うレオナの笑みがいつもに増して甘ったるい気がして、ジャックはスマホの画質が荒いことに心から感謝した。
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